ただの音の羅列を、フレーズとしてより生き生きと躍動感を持たせるには、アクセントタンギングが非常に重要です。
サックスの場合、アクセントの時は必ずタンギングをします。
サックスのアクセントはタンギングを少し強くつけばできているように聞こえるので気付いていない方が多いですが、アクセントを上手く吹けない人は意外と多くいます。
サックスでアクセントタンギングが上手くない方はこんな方です。
- アクセントの強さの調節ができない
- アクセント記号の後の音まで強くなっている
- 速い曲でアクセントができない
- 小さい音でアクセントが吹けない
アクセントタンギングが上手くできないと、何処かモヤがかかったような、キレのない演奏になってしまいます。
より生き生きとした演奏ができるようになる方法をお伝えします。
音楽記号としてのアクセントの意味
そもそも、アクセントとはどういう意味なのでしょうか?
まずは意味を確認しましょう。
- accent
- 読み:アッチェント[伊]・アクセント[英] 意味:強調・強勢
つまり音符を強調するという意味です。
メロディーは音の羅列ですが、この音の羅列をフレーズとしてより生き生きと聞かせるのがアクセントです。
人間は言葉を話す時に、重要な箇所を強調して話します。
音楽の場合も同じで、重要な箇所を強調して演奏します。
アクセントがないと、ロボットのような演奏になってしまうのです。
アクセントタンギングはどこで使うと効果的か
アクセントをつけると効果的な場所は大きく3つあります。
- フレーズの始まり
- フレーズの中の最高音
- シンコペーション
1.フレーズの始まりのアクセント
音楽はほとんどのことが言語と同じ考え方で説明できます。
言語といっても、サックスをやっている時点で演奏する音楽はクラシックやジャズなどの欧米諸国の音楽でしょうから、欧米諸国の言語が基準になります。
日本語は、最初の方が聞こえていなくても中身が聞こえていれば通じてしまいます。
欧米諸国の言語は重要な語句は必ず最初と最後に来るので発想は全く逆です。
そのため、ほとんどのフレーズの頭はアクセントをつけると効果的です。
もちろん曲調によって調整は必要ですが、少なくともハッキリと吹くべきです。
2.フレーズの中の最高音のアクセント
フレーズの中の一番高い音は、そのフレーズの中で一番目立ちます。
そもそもフレーズの中で一番強調したい音であるために一番高い音にしていることが多いので、これもアクセントをつけます。
3.シンコペーションのアクセント
先にシンコペーションの意味を確認しましょう。
強拍の移動ということですから、移動した拍が強拍に聞こえる必要があります。
つまりアクセントタンギングを用いることで、しっかりと強調する必要があるのです。
このシンコペーションは音楽の上で大切な考え方ですので、少し詳しく説明します。
シンコペーションは音楽に躍動感を与える
人間は音楽を聴くとき、必ずなんらかのパターンを基準に聴いています。
このパターンの単位・基準は様々です。
例えば、拍・小節・フレーズ・音量・音の高低などが挙げられます。
これらの、拍・小節・フレーズ・音量・音の高低などから得られるパターン(周期)からリズムの重心(ノリともいいます)を人間は自然に解釈し、音楽を聴きます。
リズムの重心が一定な時は安定しているため、緩和・安堵・継続などを感じます。
逆にリズムの重心がいびつな時は不安定なため、緊張・興奮・変化などを感じます。
リズムの重心はつまり強拍です。
シンコペーションは強拍を意図的にズラす(重心を揺らす)ことで、聴いている人に緊張や興奮などの躍動感を与えるのです。
シンコペーションをうまく吹ける、ということは、生き生きとした音楽を演奏する上で必要不可欠なのです。
アクセントはどうすれば上手くつけられるのか
アクセントに一番重要なのは対比です。そのため、常に『周りの状況』に依存します。
音楽における『周りの状況』は全ての要素が対象になります。
例えば
- 音量
- 音色
- 音価
- 音の高低
- コードに対する音の位置(3度・5度等)
- シラブル(発音)
- リズム…などなど
多岐に渡ります。
この中でサックスでアクセントをつける要素は一般的に3つあります。
- 音量
- 音色
- シラブル(発音)
1.音量を大きくしてアクセントをつける
周りの音より音量を大きくするとアクセントがついて聴こえます。
音量を大きくするには、息圧をかけます。
上部腹式呼吸をつかって息圧をかけると、音量と速さが上がって目立つようになります。
2.音色を硬くしてアクセントをつける
周りの音より音色がハッキリしていると、アクセントがついて聴こえます。
音色をハッキリさせるには、硬いタンギングを使います。
硬いタンギングをつくには、舌の根本の方でタンギングします。
シラブルを変えてアクセントをつける
アクセントをつけたい音の、前の音のシラブルをモヤモヤさせることで、次の音にアクセントをつけることができます。
モヤモヤさせるにはハーフタンギングを使います。
ハーフタンギングのつき方はたくさん種類がありますが、代表的なのは2つです。
- リードの右半分(左半分)にだけ舌をつける
- リードの奥に舌の先端をつける
ハーフタンギングはモヤモヤしたシラブルの性質上、ほとんどの場合アクセントと一緒に使われます。
アクセントをつけるときは音量・音色・発音を全て使う
サックスでアクセントをつける一般的な方法を3つ挙げました。
- 音量
息圧をかけて音量を上げる - 音色
舌の根元でタンギングをついて音色を硬くする - 発音
ハーフタンギングをで前の音の発音をモヤモヤさせる
大切なのはこの3つを全部使うことです。
特に『1.息圧をかける』と『2.音色を硬くする』は、どちらか一方だけだと、早いフレーズに対応できなかったり、耳が痛いような音色になってしまったりします。
また、『3.シラブルをモヤモヤさせる』は、フレーズをなめらかに聴かせることもできるので、クラシック音楽でなければ積極的に取り入れたい技術です。
まとめと練習方法
アクセントをつけると効果的な場所とサックスの一般的なアクセントのつけ方はそれぞれ3つずつあります。
アクセントをつけると効果的な場所
- フレーズの始まり
- フレーズの最高音
- シンコペーション
サックスの一般的なアクセントの付け方
- 息圧をかけて音量を上げる
- 舌の根元でタンギングをついて音色を硬くする
- ハーフタンギングをで前の音をモヤモヤさせる
アクセントは強調なので、周りの状態に依存します。
一般的は方法とはいえ、それぞれが技術を必要とすることなので、技術を自分のものにし、アクセントをつけられるようになって下さい。
その上で、この状況でこの音にアクセントをつけるとしたらどんな方法があるかを考えて、より生き生きとした演奏をしていただきたいと思います。
その方法を自分の耳で体感することが、一番の練習です。