人間味溢れる、豊かな表現をするのに欠かせない、ハーフタンギング。
ジャズやファンク、R&B、ポップスなど、黒人音楽の影響を受けている音楽を演奏する際に最も重要な技術の一つがハーフタンギングです。
僕が知る限り、クラシック音楽の中でハーフタンギングがでてきたことは無いです(もしかしたら有るかも知れませんが)。
それくらい、黒人音楽の象徴とも言える技術だと思います。
ハーフタンギングとは何か?
ハーフタンギングは、音を『のむ』表現をするための技術です。
金管楽器ではハーフタンギングに加えて、音を『のむ』ためにハーフバルブという技術もあります。
音を『のむ』と、フレーズに弱部ができ、フレーズにメリハリを与えます。
アクセントと組み合わせることによって、より豊かな表現をすることができます。
ハーフタンギングはどういう時に使うのか
ハーフタンギングを使う場面は大きく2つです。
- 次の音を強調したいとき
- フレーズを滑らかにしたいとき
1.次の音を強調したいとき
強調したい音がフレーズの中の最高音の時に前の音を『のむ』ことで、最高音をより強調することができます。
2.フレーズを滑らかにしたいとき
フレーズの最低音が深い谷になっている時に谷底の音を『のむ』ことで、低い音の存在感が薄くなり、谷をあまり感じさせない、なめらかなフレーズになります。
半分だけタンギングをするハーフタンギング
サックスでハーフタンギングをする場合、方法はたくさんあるのですが、代表的なのは以下の2つです。
- 半分法:リードの右半分(左半分)に舌をつける
- 根本法:リードの奥(根本)に舌をつける
それぞれ詳しく解説します。
1.半分法:リードの右半分(左半分)に舌をつける
この方法は、テナーサックスやバリトンサックスを吹く方にオススメです。
やり方は、リードの右半分(左半分)に、舌をベタッとつけます。
ハーフタンギング全般に言えることですが、舌を強くつけすぎないことがポイントです。
これは僕がテナーサックスを吹くときに実際にやっている方法です。僕は左半分に舌をつけています。
恐らく、テナーサックスを右斜めに構えているから、左半分だとやりやすいのだと思います。
半分法ハーフタンギングの利点
舌のポジションが、通常の位置とほぼ変わらないことです。
そのため、音色が変わりにくく、ハーフタンギングの次のタンギングに素早く移行することができます。
半分法ハーフタンギングの欠点
リードを覆う面積が大きいため、音が消えやすいことです。
音が消え過ぎないように、舌をつく面積を調整する必要があります。
半分法ハーフタンギングが合う楽器
テナーサックスやバリトンサックスは、リードが大きいため振動部が広いため、半分法ハーフタンギングを使っても音量にそれほど影響がありません。
また、ハーフタンギングをする際に舌の位置があまり変わらないため、マウスピースが大きいテナーサックスやバリトンサックスでも割と快適にハーフタンギングを織り交ぜることができます。
僕は色んな種類のハーフタンギングを試した結果、この方法が一番しっくり来ました。
2.根本法:リードの奥(根本)に舌をつける
この方法は、アルトサックスやソプラノサックスを吹く方にオススメです。
やり方は、リードの根本、つまりリガチャーに近い方に舌の先端7mmくらいを、ベタッとつけます。
半分法と同様に、舌をリードに強くつけ過ぎないようにします。
根本法ハーフタンギングの利点
リードにつける舌の面積が少ないため、音量が減りにくいことです。
そのため、音量を落とさずシラブル(発音)だけ変えることが割と容易にできるため、フレーズがハーフタンギングの部分で途切れにくくなります。
根本法ハーフタンギングの欠点
普段の口の中の状態からの変化があるため、ハーフタンギングから次のタンギングに移る際にタイムラグが出やすくなります。
口の中の状態が変わるため、音色が変わってしまいがちなので、なるべく音色を変えずにハーフタンギングをつけるように気をつける必要があります。
根本法ハーフタンギングが合う楽器
アルトサックスやソプラノサックスは、根本法を使っても口の中の変化も少なく、音色の変化が起きにくい上、リードにつける舌の面積も少なくて済むため、割と簡単にハーフタンギングを使うことができます。
たくさんあるハーフタンギングの種類
ハーフタンギングの代表的な2つの方法をお伝えしましたが、ハーフタンギングの種類は本当にたくさんあります。
実際に、他のミュージシャンにハーフタンギングのやり方を聞いたところ、十人十色という感じでした。
正直、細かいところではありますが、みんな違う方法でハーフタンギングをしているのを知ったときは驚きました。
大切なのは、自分の表現したいニュアンスを出すために、自分で色々試すことだと思います。
ハーフタンギングに限ったことではありませんが、自分の好きなプレイヤーがどんなハーフタンギングをしているかをよく聴いてみるといいとおもいます。
まとめとハーフタンギングの練習方法
ハーフタンギングをつく方法は大きく2つあり、楽器の大きさによって向き不向きがあります。
- 半分法:テナーサックスやバリトンサックスに向いている
- 根本法:アルトサックスやソプラノサックスに向いている
重要なのは自分のやりやすいやり方を見つけ、理想の音に近づけることですが、まずは自分の楽器の種類に向いているもので当面試してみるのがいいでしょう。
ハーフタンギングとアクセントタンギングを繰り返す
ハーフタンギングを習得する上で一番難しいのは、ハーフタンギングからアクセントタンギングに移るときです。
普通のタンギングと同じように、できる限り音と音の隙間を無くしつつ、音色を変えずにアクセントができるようになるまで、何度も行き来して練習しましょう。